日米テクノロジー連携は「デジタル貿易」の最前線

エリー・キーナン(キンドリル グループ・プレジデント)

今週の高市早苗内閣総理大臣による米国訪問は、日米関係の強固さを改めて印象付ける機会となるでしょう。地政学的な緊張や貿易を巡る議論が注目を集める一方で、日米双方の企業が長年にわたり築いてきた産業面での協力関係は、その価値が見過ごされがちです。こうした関係は数十年にわたって積み重ねられてきたものであり、価値観の共有、信頼性の高い社会インフラ、そして開かれたデジタル制度が、両国に成長と安定をもたらしてきたことを示しています。

私はキンドリルで世界全体を統括する立場から、日米の産業連携が、太平洋をまたいで両国に具体的な成果をもたらしている現場を見てきました。日米協力はデジタルインフラやサイバーセキュリティ、社会や企業活動に不可欠な基幹システムの分野で進んでおり、あらゆる産業においてデジタル経済を支える運用基盤となっています。こうした基盤があるからこそ、クラウドサービスや金融サービス、物流や在庫の管理、ソフトウエア、コンテンツなどの分野において、質の高いデジタル取引が国境を超えて可能となっています。

技術分野における日米協力は、世界情勢が複雑化する中でも、両国の基幹産業の持続性を支えてきました。技術革新を市場に届けることは日米双方の最重要課題であり、共通のルール整備は新技術の共同開発や迅速な実用化を可能にするものです。米国のテクノロジー企業は人工知能(AI)や量子計算で優位性を持ち、日本はロボット技術や先端製造分野で強みを発揮しています。こうした補完関係のもと、技術革新は双方向に行き交い、経済活動の活性化や雇用創出、持続的な成長を可能にしています。

運用面でも、日米連携は国境を越えた技術導入を容易にします。日本企業はIT基盤の安全性・強靭性・信頼性を確保しながら、米国市場で事業を大規模に展開できるようになります。

こうした開放された環境こそが、成長の原動力となるのです。

日米関係は、物理的なモノの貿易だけでなく、デジタルインフラやデータのやり取り、信頼性の高いITサービスによっても支えられています。

エリー・キーナン

(キンドリル グループ・プレジデント)

日米関係は、物理的なモノの貿易だけでなく、デジタルインフラやデータのやり取り、信頼性の高いITサービスによっても支えられています。「日米デジタル貿易協定」は、まさにこうした経済の実態を制度として裏付け、関係を強化してきました。同協定や、これに倣って締結された他の協定により、データは国境を越えて自由に移動できるようになり、政府による過度なデータ・ローカライゼーションの要求は抑制されてきました。あわせて、デジタル製品にかかる関税も撤廃されました。

企業が国境を越えて活動するためには、デジタル貿易の開放性と安全性、そして予見可能性を確保することが不可欠です。国際協定は、そのための共通ルールを支える重要な枠組みです。日米デジタル貿易協定は、日本と米国が世界的なデジタル貿易ルール作りの主導をしていることを示しています。

また、日米のデジタル協力は、サイバー攻撃の脅威が常態化する中で、社会や企業活動を支えるシステムの信頼性を高めることにも寄与します。

企業経営においては、場所を問わず安定的に稼働する情報基盤の確保が前提条件となります。日米のテクノロジー関連企業は、設計段階から安全対策を組み込む「セキュア・バイ・デザイン」を軸に協力を深め、システムのレジリエンスと安全性を経済活動の中核として位置付けています。

昨年秋、私はジョージ・グラス在日米国大使と会談し、日米が共有する技術分野の優先課題―レジエリエンスの構築、デジタル技術による革新、そして経済成長の促進について意見を交わしました。今後の日米関係の真価は、これらの課題の実行にかかっています。デジタル貿易、信頼性の高い社会基盤、そして産業界の連携は、価値観を共有する経済圏はともに成長を実現できることを示すモデルです。産業界の足並みがそろえば、日米関係は持続性を増し、長期的な安定を支える基盤はより確かなものとなるでしょう。

エリー・キーナン

キンドリル グループ・プレジデント

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