ビジネスにおける背景
1925年に創業し、乳製品を中心とした事業を展開する食品メーカーである雪印メグミルクは、人口増加や気候変動などの社会環境の変化を受け、「食の持続性」の実現に向けたデータ活用を、経営課題として推進しています。
雪印メグミルク 常務執行役員 財務・DX戦略担当、広報IR副担当の河本紳氏は、「時代によって進化する『乳の価値』を最大化し、食に深く関わる社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。そのためにはデータの組織的な活用が必要です。例えば、日々の製造・販売データを活用した需要予測の精度向上や原材料調達の最適化、そして商品開発への反映による価値創造などの取り組みが欠かせません」と語ります。
確かなデータをもとに正しい経営判断を素早く行っていくためには、システム面での仕組みだけでなく、組織文化も含めた変革を行っていく必要があると考えました。
雪印メグミルクのストーリー
技術的な課題
雪印メグミルクは、次の100年に向けた持続的成長のエンジンとして、DXと人材育成を重視しており、「雪印メグミルクグループDXビジョン」に基づき、全社的なデータ利活用の推進や組織文化の変革に取り組んでいます。
その中核となるプロジェクトの1つが、データ利活用基盤の刷新です。
雪印メグミルク DX戦略部 部長の小幡貴司氏は、「当社は多種多様な大量データを保有していますが、十分に活用できていませんでした。システムの観点では、既存のDWHは老朽化し、当社が推進するDXを支える戦略的ツールとしては改善の余地がありました」と刷新の背景を説明します。
データの活用を組織の文化として定着させるための課題は大きく2つありました。1つは大量のデータを存分に活用できていないこと、もう1つは現場での分析業務に障壁があったことでした。
技術的には、データの種類と容量の増加に伴う、夜間バッチ処理時間の増加が、特に月初や週初めなどのアクセスが集中する時期に深刻なパフォーマンス低下を引き起こしていました。このため、始業までに完了せず、昼まで待ってもらうように通知しなければならない状況が頻発するなど、ユーザーの業務効率に大きな影響を与えていました。
また高度な分析を行った際のレスポンス遅延が起こり、場合によってはタイムアウトで結果が戻ってこないこともありました。分析業務の現場ではDWHのデータをダウンロードした後、Excel上で二次加工を行うという非効率な作業が常態化していました。
ソリューション
このような課題を踏まえて、雪印メグミルクでは統合DWH基盤構築プロジェクトが立ち上がり、そのパートナーにはキンドリルが選ばれました。プロジェクトでは以下に示すさまざまなソリューションの導入を進めていきました。
- オンプレミスで稼働していたDWHをTeradata VantageCloudに、インフラをAmazon EC2に移行。
- BIツールはこれまで利用してきたStrategy社製品をクラウドサービスに移行。
- Teradata VatageCloudに関しては、多様なデータの活用を見据え、構造化データだけでなく非構造化データの活用が可能で、高度分析機能を備え、多くのデータを高速に処理できる点を評価。
- ITインフラの刷新に伴い、運用監視プラットフォームにはKyndryl Bridgeを導入。
- キンドリルやTeradata社とともにPoC(概念実証)を実施し、データベース構造やミドルウェア製品のパラメーターチューニングなど、さまざまな角度からの調整を重ねて性能向上を実現。
大規模プロジェクトの知見や経験があること、プロジェクト全体を強力に推進するリーダーシップがあること、そして将来にわたってDX戦略の戦略的パートナーとなり得ることを重視し、キンドリルに依頼しました 。
このプロジェクトによる進歩
データ利活用基盤構築は2023年にスタートし、2025年2月に新システムが本番稼働しました。キンドリルとの協力により、以下のような成果が得られています。
- 旧システムで最も処理時間を要していたバッチ処理は約10倍の処理速度向上を実現し、123分から13分へと短縮。
- 夜間バッチ処理が大幅に短縮された結果、朝9時の業務開始時にユーザーを待たせる状況が解消。
- 基盤上にデータが統合されたことでデータのダウンロードや二次加工が減少し、データ分析業務の生産性が向上。
- クラウド移行による運用管理の大幅な負担軽減やコスト削減を実現。以前は3〜5年ごとに必要だったハードウェアやミドルウェアの更新作業が不要に。
- Kyndryl Bridgeを活用した運用監視体制により、オンプレミス基盤で培った運用ノウハウをクラウド環境にも適用し、効率的な運用を実現。
- 非構造化データの活用や高度な分析手法の導入によって、事業や研究の価値を高める基盤を確立。
雪印メグミルクでは、今回の基盤構築をゴールではなくスタートと位置づけ、今後はこの基盤を活用したデータ利活用の拡大によるDXを強力に進めます。
小幡氏は「多様なデータを扱える高性能環境を手に入れたことが1つの大きな成果であり、今後は非構造化データの活用や高度な分析手法の導入によって、事業や研究の価値を高める道を切り拓いていきます」と強調します。
雪印メグミルク 代表取締役副社長の戸髙 聖樹氏は「気候変動や世界的な人口増加により『食の持続性』の実現が懸念される中、私たちは常に社会課題解決へ挑戦し、成長していきたいと考えています。世の中や市場が急速に変化する中で、私たちの挑戦と成長を実現するためには、生産の現場から経営まで、あらゆる部門が必要なデータへスピーディにアクセスできる環境を整備し、ビジネスのアジリティを高める必要があります。
キンドリルには今後も、私たちの会社の理念や特性も理解した上で、データ活用の拡大に向けたアドバイスや支援に期待しています。」と次の100 年に向けた展望を語ります。
気候変動や世界的な人口増加により『食の持続性』の実現が懸念される中、私たちは常に社会課題解決へ挑戦し、成長していきたいと考えています。キンドリルには今後も、私たちの会社の理念や特性も理解した上で、データ活用の拡大に向けたアドバイスや支援に期待しています。