オフィス回帰の方針に対する評価が分かれることは、世界中の金融サービス企業の経営層が認めるところでしょう。
テクノロジーによってハイブリッドワークモデルが実現し、望ましいものとなっている中で、経営層はオフィスで働く従業員が感じる利点と、従業員の経験や満足度を優先する企業ポリシーとのバランスを取らなければなりません。
この議論は、金融サービス業界で特に活発です。 ハイブリッドワークモデルによって生産性、コラボレーション、およびカルチャーに影響を与えるという経営層の主張により、オフィス回帰の義務付けやオフィスへの出勤に関するポリシーの指針となりました。
一方で、金融サービス業界で働く従業員はどのように考えているのでしょうか?スラックスではなくスウェットパンツという服装のアイデアはよいとして、これらの企業を支えるフロントオフィスとバックオフィスのチームは、ハイブリッドワークモデルによって、対面で働く場合に生じるコラボレーションや包括性への障壁が実際に低くなると考えているのでしょうか? 柔軟な勤務形態は、企業カルチャーを実際に向上させることができるでしょうか?
私たちは、これらの疑問に答えるために、より深い調査が必要であると考えました。
キンドリルは、ハイブリッドワーク環境における生産性、コラボレーション、カルチャー、および包括性についての考え方を把握するために、世界中の大手金融サービス企業の管理職およびスタッフ300人を対象に調査を実施しました。
簡潔にまとめると、彼らの回答は「ハイブリッドを導入して、結果を出す」ということです。
調査から得られた5つの重要なポイントと、金融サービス企業の経営層に提案するアクションステップを考えてみましょう。
ハイブリッドワークモデルは金融サービス業界で働く従業員に圧倒的に好まれている
調査対象者の大多数が、通常の勤務で少なくとも週に2日は既にリモートで働いていると回答しました。 ほとんどの人(合計86%)が、ハイブリッドワークモデルが自分にとって重要であると強調しており、そのうち47%は、少なくとも一部の時間はリモートで働くことが非常に重要であると回答しています。 この意見は、回答者の年齢層、職務経験年数、フロントオフィスまたはバックオフィスの仕事を問わず共通しています。
あらゆる層の対象者がこの点を非常に強調しており、75%が一部の時間をリモートで働くことができない場合には、少なくとも他の仕事を探すことを検討すると回答しています。 この調査結果は、金融サービス業における人員削減の課題に関する別のレポートと一致しています。
最もバランスが取れる勤務形態は? 選べるとしたら何日間リモートで働くか?という設問に対し、 72%が少なくとも週に3日はリモートで働けることを選べるとよいと考えています。 従業員数が5,000人を超える企業で働く回答者は、週に5日リモートで働くことを好む傾向が顕著に表れました。
Q: 少なくとも一定の時間、リモートで働くことができなくなった場合、勤務についてどう感じますか?
ハイブリッドワークモデルで生産性を向上させる
ハイブリッドワークモデルは好まれるだけでなく、回答者の83%は、その取り組みによってより多くの仕事をできるようになることに同意または強く同意しています。 また、83%がハイブリッドワークモデルによって納期を守りやすくなることに同意または強く同意しています。 79%が、チームのことを考えるとハイブリッドワークスケジュールを採用することで、同僚がより多くの仕事をできるようになると回答しています。 これは特に、同僚が3時間以上離れた場所にいる回答者に顕著に表れました。
ほとんどの人が、ステータスの更新、データ分析、研修や学習活動など、高い集中力を要する個人指向の仕事を行う際に、オフィス外で働くことを好みます。 ネットワーキングやチームビルディング活動は、オフィス環境で行われることが好まれることがほとんどでした。 (ビデオ会議でのハッピーアワーもこれで終わりですね!)
結論:回答者の76%が、ハイブリッドワークスケジュールを採用することで、同僚がより質の高い仕事を提供できると回答しています。
Q: 次の意見にどの程度同意しますか:ハイブリッドワークスケジュールを採用すると、同僚はより質の高い仕事を提供できる。
ハイブリッドワークモデルはコラボレーションを促進する
ハイブリッドワークとチームダイナミクスの関連について尋ねたところ、回答者の64%が、ハイブリッドワークモデルによってチームがより協力的になることに同意または強く同意しました。 また、物理的な距離によってやり取りが制限されることはないようで、61%は実際にリモートで仕事を行う際に、同僚に業務に関する意見を求める可能性が高いことに同意または強く同意しています。
広く報告されているビデオ会議の疲労(「Zoom疲れ」と呼ぶ人もいます)を考えると、ビデオ会議の増加がハイブリッドワークモデルのマイナス面として挙げられることが予想されます。 しかしながらこの調査結果では、そのような傾向は見られませんでした。 Zoom疲れにもかかわらず、1人以上の同僚がリモートで働いている場合に会議に費やす時間が長くなると回答したのは半数未満でした。
オフィス外で働く時間によって、コラボレーションも促進されるようです。 78%が、ハイブリッドワークスケジュールを採用すると、オフィスで働く日に、チームとの連携が強まることに同意または強く同意しています。 これは、35歳未満の従業員に特に当てはまります。
回答者の4人中3人以上が、ビデオ会議ツール、社内メッセージングシステム(SlackやTeamsなど)、VPN接続、およびITヘルプデスクへのアクセスを、重要または非常に重要と回答しました。 特に驚くことではありませんが、これらのツールへの信頼できるアクセスとサポートがなければ、ハイブリッドワークは機能しません。
Q:次の意見にどの程度同意しますか:ハイブリッドワークスケジュールを採用すると、オフィスで働く日にチームとの連携が強まる。
ハイブリッドワークモデルは、ダイバーシティー、エクイティ&インクルージョンプログラムを強化する可能性がある
調査を進める中で、ハイブリッドワークモデルによって生じる、または悪化する可能性のある意図しない不平等についての認識を調べることに特に興味を持ちました。調査対象者は想定とは反対の結果を示しました。 会議のカルチャーについて意見を求めたところ、67%が対面での会議よりもバーチャル会議の方が意見を言いやすい環境であると回答しました。 さらに、64%が「バーチャル会議の方が意見を言いやすい」という意見に同意または強く同意しています。
35歳未満の従業員と、職務経験が12年以下の従業員が、この意見に同意する傾向が特に強いことが分かりました。
全回答者の過半数をわずかに超えた58%が、「バーチャル会議では対面での会議よりも、1人がほとんどの発言をする可能性が低くなる」という意見に同意または強く同意しています。
3つのデータポイントが特に注目を集めます。 経験の多様性、公平性、および包括性(ダイバーシティー、エクイティ&インクルージョン)を促進するための企業の実践にますます厳しい目が向けられる中、ハイブリッドワークモデルは、意図した望ましい成果を促進するのに役立つ可能性があると考えられます。
昇進について言うと、参加者の78%が「ハイブリッド環境で働いているときも、オフィスでフルタイムで働いているときと同様にキャリアアップする権利を与えられている」という意見に同意しています。
Q: 次の意見にどの程度同意しますか:バーチャル会議の方が意見を言いやすい。
ハイブリッドワークモデルが働き方のカルチャーを向上する
リモートワークによって企業カルチャーが失われるという意見とは対照的に、調査対象者は、その逆が真実である可能性を示唆しました。 大多数の85%が、ハイブリッド環境で働くことが会社の働き方のカルチャーによい影響を与えることに同意または強く同意しています。 注目すべきは、反対しているのはわずか2%という点です。
カルチャーが生きた経験であることを踏まえ、柔軟な働き方が毎日の従業員体験によい影響を与えているかどうかを尋ねました。 実際、87%がこれに同意または強く同意しています。
上司のサポートがなければ、高いレベルの同意は得られなかったでしょう。 一般的に、調査対象者は上司からのサポートを感じているようです。
- 91%が同意:私の上司は私を信頼してリモートで働かせてくれる。
- 74%が同意:私の上司は、ハイブリッドワーク環境によってチームのメンバーの生産性および効率性が向上するという見解をもっている。
しかし、次のようなニュアンスがあります。半数以上が、上司は自分や同僚がほとんどの時間またはすべての時間をオフィスで働くことを望んでいると回答しています。 この回答は、特に従業員数が10,000人未満の企業の回答者の間で共通していました。
この二重性は興味深いものです。なぜ従業員は、リモートでの勤務が信頼されていると感じているにもかかわらず、上司がオフィスでの勤務を増やすことを望んでいると感じているのでしょうか?
これは、ハイブリッドワークモデルが金融サービス業界で比較的新しいこと、またはその指針がまだ定まっていないことを反映しているのではないかと考えらえます。
同時に、週に3日以上オフィスで働いている回答者は、上司やリーダーが自分を信頼してリモートで働かせているとはあまり考えない傾向がありました。
従業員の好みに反するだけでなく、企業カルチャーを衰退させるようであれば、より厳格な出社ポリシーを検討する価値があります。
ハイブリッドワークモデルを成功させる具体的な要因を尋ねたところ、調査対象者は自分のスケジュールを管理する能力が最も大きく影響すると回答しました。
金融サービスのリーダーに向けたアクションステップ
この調査を実施したのは、ハイブリッドワーク環境が生産性、コラボレーション、包括性、およびカルチャーに与える影響について、金融サービス業界で働く従業員がどのように考えているかを理解するためです。
この調査結果は、従業員がハイブリッドワークモデルを好むことを明らかにしただけでなく、ハイブリッド方式が適切に有効化およびサポートされていれば、全体的な従業員体験を改善できることも示唆しています。
アクションステップ1:UXに配慮する
パンデミックの間、私たちのお客様である金融サービス企業の多くは、柔軟な働き方を可能にするテクノロジーに多額の投資を行いました。 しかし、システムの使用エクスペリエンスを合理化して生産性を向上させるために、さらにできることがあります。
例えば、従業員の端末で毎日やり取りされるEメール、チャット、およびその他のシステムメッセージの量を考えてみてください。 これらのツールを最適化およびパーソナライズすることで、余分なメッセージをフィルター操作できます。 しかし、多くの企業はそうした作業を優先してきませんでした。
ファイル共有、コラボレーション、人事、およびその他の機能の各種システムについても同じことが言えます。 これらのツールにいつでもどこでもアクセスできることが重要ですが、シングルサインオン機能やダッシュボードビューがなければ、単にシステムにアクセスするだけでも生産性が低下する可能性があります。
アクションステップ2:コラボレーションを促進する
ハイブリッドワークモデルを成功させる具体的な要因を尋ねたところ、調査対象者は自分のスケジュールを管理する能力が最も大きく影響すると回答しました。
ハイブリッドワークモデルにより、従業員はタイムゾーンを超えて、非同期の時間にもコラボレーションができます。 しかし、異なるタイムゾーンにいる同僚に意見を求めることや、勤務時間外に同僚に意見を求めることが自然と習慣になることはないでしょう。 これには、経営陣からの期待値の設定、モデリング、および強化が必要です。
私たちの調査結果は、このような俊敏性を実現するリーダーが、コラボレーション、生産性、組織文化、および従業員満足度の向上という成果に辿り着くことを示唆しています。
特に後者の2つの成果は、より適切な採用、維持、顧客体験、および収益の向上と相関関係があります。
アクションステップ3:カルチャーのエンゲージメントを促進する
ハイブリッドワークモデルは金融サービス業界では比較的新しいものですが、このモデルには幅広い魅力があるようです。 回答者は、リモートワークが企業カルチャーを破壊するという意見には同意していません。
それでも、回答者がハイブリッド方式に意欲的であるにもかかわらず、ハイブリッドワーク特有の物理的な分離によって、イノベーションを促進し、ビジネスイニシアチブを前進させるためのエンゲージメントが複雑になる可能性があります。
私たちの経験から、熱意のある従業員が接着剤の役割を果たすことがわかっています。 アプローチの1つは、地域活動を調整し、企業のカルチャーに関連した活動を支援できるカルチャーアンバサダーを正式に組閣し、活性化することです。 (それがキンドリルが行ったことです。)
効果的な従業員エンゲージメント戦略は、多くの場合、組織のデジタルワークプレイスの成熟度と、チームのハイブリッドワークの実現可能性の証となります。
調査データについて
私たちは第三者の調査会社と協力して、少なくとも一部の時間はリモートで働く金融業界の従業員300人を対象にオンライン調査を実施しました。 回答は2023年3月30日から4月19日まで収集されました。
回答者の属性
- 大企業(従業員数1,000人以上)の個人貢献者および管理職(非取締役レベル)
- 5年以上の職務経験があり、対面で働いた経験がある者
- ヨーロッパ、インド、日本、または北米の主な拠点
業種別内訳
- 金融サービス業:回答者の35%
- 銀行業:回答者の31%
- 保険業:回答者の34%