ショーン・ディソウザ(Shawn D’Souza)
Kyndryl Consult シニア・バイス・プレジデント、モダナイゼーション・リーダー
AIの導入、俊敏性の向上、そしてより迅速な成果創出への期待が高まるなか、企業にはこれまで以上に迅速な変革が求められています。しかし老朽化したテクノロジー環境では、AIを安定的にスケールさせることが難しいことも明らかになっています。キンドリルの調査によると、企業の半数以上が、技術スタックの基盤に課題があるため、イノベーションが遅れていると報告しています。
したがって、今では、モダナイゼーションはAI活用に向けた準備を整えるための重要な基盤であり、企業投資の最優先事項となっています。しかし、ほとんどのモダナイゼーション・プロジェクトは多大な労力とコストが必要で、リスクが高いわりには、すぐに成果を出すことができません。
キンドリルのエージェンティックモダナイゼーションは、 Kyndryl Bridgeを通じて、1,400社以上のお客様を支援する中で培ったミッションクリティカルなモダナイゼーションの知見を活用し、企業がアプリケーションやインフラ、業務プロセスの現状を可視化し、モダナイズと最適化を継続的に進められるよう支援します。同時に、組織が有する知識の保全や、専門家による監督のもとでのガバナンスも確実に維持していきます。
本稿では、Kyndryl Consultのグローバル・モダナイゼーション・リーダーで、シニア・バイス・プレジデントでもあるショーン・ディソウザ(Shawn D’Souza)が、エージェンティックモダナイゼーションの実際の機能と、組織がどのようにモダナイゼーションに取り組めるのかについて解説します。
キンドリルの「エージェンティック・モダナイゼーション・サービス・アズ・ソフトウェア(専門家の知見をソフトウェア化されたワークフローとして提供するモデル)」とは?
今回の発表は、企業テクノロジーにおける2つの大きな課題に応えるものです。第一の課題は、モダナイゼーション・プロジェクトの予測可能性を高め、コストとリスクを低減すること。第二の課題は、そのソリューションを拡張し、世界中の何千もの企業の需要に応えることです。
第一の課題は、キンドリルのエージェンティック・モダナイゼーション・サービス・アズ・ソフトウェアで解決します。これは、長年にわたり蓄積されてきたミッションクリティカルなエンジニアリングの専門知識を、あらかじめ設定されたエージェンティックワークフロー(AIエージェントによる自律型業務プロセス)として体系化し、クラウドソフトウェアのようにオーケストレーションし、大規模に展開できるようにしたものです。予測可能で反復的な作業をワークフローが担い、キンドリルの専門家は、それぞれのお客様独自の環境や課題に注力できるのです。
第二の課題は、こうしたソリューションをいかに大規模展開するか、ということですが、これにはKyndryl Bridgeが対応します。Kyndryl Bridgeは、AIを活用したオープンな統合プラットフォームで、ハイブリッドIT環境全体に、エージェンティックワークフローやAIエージェントの導入、オーケストレーション、ガバナンスを実行するためのテクノロジー基盤を提供しています。
これは、AIが「いつか」価値をもたらすという将来構想にとどまるものではありません。このモデルはすでに、世界各地の規制産業の実際のお客様プロジェクトを通じて、その有効性が実証されています。分散型やメインフレームのワークロード、パブリッククラウドやプライベートクラウド、エッジ環境、ソフトウェア開発、IT環境の運用において、このエージェンティックワークフローは、モダナイゼーションの取り組み(インフラ、アプリケーション、ビジネス変革など)を幅広く支援します。
それにより、従来よりも大幅に少ないリソースで、より迅速かつ大規模で、一貫性のあるモダナイゼーションを実現できます。これにより、システムを運用しながらモダナイズし、モダナイズ後も継続的に運用するというサイクルを、大規模に展開できます。
この手法がキンドリルのお客様にもたらすメリットとは?
簡単にいうと、キンドリルの「エージェンティックモダナイゼーション」の手法を用いれば、ビジネスリーダーは、プロジェクトをより短期間で実施しながら業務への影響を最小限に抑え、予測可能性の高い形で推進できるという安心感を得られます。
キンドリルのエージェンティック・モダナイゼーション・ワークフローは、クラウドソフトウェアのように柔軟に拡張できるため、モダナイゼーションの実施期間を短縮できます。同時に、技術的負債を解消し、AI活用に向けた準備に不可欠な技術基盤への移行を支援します。
また、モデルの使用を最適化し、試行錯誤による不要なトークン消費を抑えることで、モダナイゼーションのコスト削減を実現します。実績のある事前構築済みのAIワークフローを活用することで、不要な人手を削減し、人材がより付加価値の高い業務に注力できるようになります。専門家の知見は引き続き重要な役割を果たしながら、より戦略的かつ高付加価値な業務に集中できるようになります。
また、実績ある標準化されたアプローチであれば、予測可能性と信頼性も高くなり、リスクの低減につながります。それはキンドリルの継続的モダナイゼーションの手法の一環です。AIエージェントによる生成・実行と専門家による監督を組み合わせ、成功が実証されるまで新旧のシステムを並行して用いる、といった手法がモダナイゼーションの各段階に組み込まれています。
また、高いポータビリティを備えており、特定のベンダーや技術スタックに依存しません。お客様は単一のクラウド、AIモデル、技術スタックに縛られることなく、ビジネスのニーズ、コスト、企業標準に合わせて、モデル、プラットフォーム、インフラを最適に選択できます。
継続的なモダナイゼーションとは?
「継続的なモダナイゼーション」とは、モダナイゼーションを数年ごとに実施する大規模なプロジェクトとしてではなく、継続的に評価・改善を行う運用規律として捉える考え方です。実績あるAIワークフローと専門家の助言を活用することで、自社のテクノロジー環境を継続的に評価し、変革していくことが可能になります。これによって、ビジネスと共に進化を続ける技術環境を生み出すことができます。
私たちは、モダナイゼーションを、リスクの高い一度限りのプロジェクトから、継続的な規律へと転換しています。エージェンティックワークフローと人間の専門知識を組み合わせて、よりスピーディな大規模展開を、予測可能な形で実現できるようにしています
モダナイゼーションにおけるキンドリルならではの強みとは?
キンドリルは、世界屈指の複雑でミッションクリティカルなテクノロジー環境を運用し、モダナイズしています。中には、信頼性とレジリエンスが不可欠である規制産業のお客様もいます。私たちはKyndryl Bridgeを通じて、テクノロジーシステムの構造や作動の仕組みについて、深い知識を積み重ねてきました。ですからキンドリルは、どうすればビジネスに影響を与えず、環境をモダナイズし運用できるか、ということを熟知しています。
こうした専門知識をより多くのお客様に展開するため、エンジニアリングや運用について蓄積してきた専門知識を体系化した、エージェンティックワークフローを作り上げました。これらのワークフローは、反復可能なモダナイゼーションタスクを自動で行う一方、最も重要な部分では監督やガバナンスを実施します。こうすることで、数少ない専門家に大きく依存する従来の手法に比べて、はるかに一貫性も予測可能性も高く、大規模展開が可能な方法で、実績あるモダナイゼーションの手法を適用できるようになります。
従来のモダナイゼーションの手法の大きな課題は?
ひとつはリスクです。大規模な変革プログラムは、予測や大規模展開が難しく、日常業務に必要なシステムに影響を与えず実行することもなかなかできません。
最後に携帯電話を買い換えたときのことを思い出してみてください。新しいカメラや機能は魅力的ですが、一番心配なのはデータの移行です。古いデバイスから新しいデバイスへデータを移行している間、重要なデータを失わないか、あるいは、新しいデバイスの更新中に重要な電話を逃すのではないか、と心配だったことでしょう。
それをビジネスレベルで考えてみましょう。フォーチュン500企業がミッションクリティカルなシステムをモダナイズする場合、同様の不安がありますが、そのリスクははるかに大きくなります。不安なのは写真転送が遅いことなどではなく、ビジネスに影響を与えるシステム停止が最悪のタイミングで起きることです。こうしたシステム停止は決して珍しいことではありません。これが、企業がモダナイゼーションプロジェクトを後回しにしてしまう理由のひとつです。成果を明確にした標準的なモダナイゼーションの手法を持っていることは、ITやビジネスのリーダーたちの信頼を得る上で大きな役割を果たします。大規模展開が可能なモダナイゼーションの再現可能な設計図こそが、私たちの目指すところなのです。
リスクの他にも、モダナイゼーションプログラムは、高度な専門知識を持つ人材の不足のため、しばしば制約を受けることがあります。当然ながら、そうした人材を増やすのは簡単ではありません。そこでAIを活用することで、限られた専門人材の能力を拡張できます。キンドリルは、実績あるモダナイゼーションの専門知識を、繰り返し使えるAIワークフローに体系化することで、その専門知識を、より一貫性の高い方法で、はるかに大規模に適用できるようにしています。
お客様はキンドリルの特定のクラウドやテクノロジーにロックインされるのでは?
いいえ。その反対で、キンドリルのエージェンティックモダナイゼーションは、オープンな仕様になっています。あらかじめ設定されたワークフローとサービス・アズ・ソフトウェアのモデルは、オープンスタンダードなアーキテクチャーを取り入れ、複数の基盤モデル、技術スタック、インフラ環境をサポートしているので、お客様はキンドリルの技術スタックに依存することなく、柔軟性、ポータビリティ、制御を保つことができます。
当社の「一度構築すれば、どこでも実行可能」という手法によって、お客様はどんな環境でも、特定の技術スタックに依存することなく、エージェンティックワークフローをシームレスに実行することができ、ユースケース、お客様の好み、ワークロードの要件、コスト、パフォーマンス、ガバナンス要件、地域的な利用可能性などに応じて、さまざまなフロンティアモデル(最新の大規模AIモデル)を活用できるようになります。
Kyndryl Bridgeの役割とは?
2022年の提供開始以来、Kyndryl Bridgeは1,400社以上のお客様のミッションクリティカルかつ規制要件の厳しいテクノロジー環境を管理・モダナイズするための、信頼される基盤となっています。
キンドリルのエージェンティックモダナイゼーションは、どんな企業の環境にも直接導入できますが、今回の発表により、Kyndryl Bridgeを通じてこの機能を利用いただけるようになりました。お客様はモダナイゼーションを加速し、ハイブリッドクラウド環境全般において、コストの可視化、セキュリティ、規制要件に対するコントロールが確立された、エージェンティックシステムを管理できるようになります。
本記事は、2026年8月6日(米国現地時間)にキンドリルが公開した記事の抄訳です。本記事の正式言語は英語であり、その内容および解釈については英語が優先されます。原文は下記URLをご覧ください。 https://www.kyndryl.com/us/en/about-us/news/2026/08/what-is-agentic-modernization