裏庭での驚きからエンタープライズAIへ:劉功義の信念に基づいたイノベーションの歩み

幼少期の体験が、技術理事への道のりを形作る

何年も前のこと。ある冬の朝、幼い劉功義は裏庭で思いがけない光景を目にしました。庭にある自然の素材だけで作られた、自分と同じくらいの背丈の小さな鹿が置いてあったのです。

その鹿は、アーティストを志していた劉の父が、小枝や木片を組み合わせて一晩かけて作り上げたものでした。息子へのサプライズとして作られたその作品は、結果としてより大きな意味を持つものとなりました。

劉は次のように述べています。「父は私に、イノベーションは必ずしも高価で複雑なものでないことを、身をもって教えてくれました。創造性と工夫を活かせば、すばらしいものを生み出すことができるのです」

From left: Kyndryl's 2025 Class of Distinguished Engineers, Suraj Subramanian and Dr. Gongyi Liu.

From left: Kyndryl’s 2025 Class of Distinguished Engineers, Suraj Subramanian and Dr. Gongyi Liu.

幼少期の感動が、単に創造的なだけでなく人々にとって有意義なイノベーションを生み出すという、生涯にわたる情熱の始まりとなりました。現在、システム情報工学の博士号を持つ劉は、キンドリルの技術理事 (DE: Distinguished Engineer)に選出されました。これは、キンドリルのみならずテクノロジー業界全体において最も名誉ある称号の一つです。

劉は技術理事として、これまでに選出された「卓越した受賞者」に名を連ねることになりました。

 

 

「父は私に、イノベーションは必ずしも高価で複雑なものでないことを、身をもって教えてくれました。創造性と工夫を活かせば、すばらしいものを生み出すことができるのです」

 

劉は、大手企業顧客のクラウドとITオペレーションのモダナイゼーションにおいて中心的な役割を果たすとともに、日本でのAIプライベートクラウドのイニシアチブにおいても先駆者となりました。彼は、運用の効率化と業界をまたぐ一貫したデリバリーモデルの確立を目的として、データモダナイゼーションとKyndryl Bridgeを通じたスケーラブルなAI導入に取り組んでいます。このイニシアチブは、企業インフラにインテリジェンスとアジリティを大規模に取り入れるための、より広範な取り組みを反映するものです。

しかし、劉のような経験豊富なイノベーターであっても、リスクを負って大胆な決断を下すことは容易ではありません。彼は、キャリアを通じて、あえて自身のコンフォートゾーンから抜け出す課題に取り組むことを意識的に続けてきたと述べています。

「未知の領域に踏み込むことは決して簡単ではありません。しかし、成功を手に入れるためには、たとえ準備ができていないと感じていても、チャンスをつかむために手を挙げて挑戦する必要があります」

 


コラボレーションはイノベーションの原動力


イノベーションとはアルゴリズムやインフラだけでなく、人間に関わるものであると劉は感じています。技術的な功績によって彩られてきれたキャリアがあるものの、彼はシステムについて語るより、自身の歩みを形作ってきた人間関係について語ることが多いのです。

「巣の中のたった1匹の蜂によって、蜂蜜を作ることができるでしょうか?私のキャリアは、学生時代の友人からキンドリルのメンター、そしてお客様や提携パートナーに至るまで、実に多くの人々によって形作られてきました」

劉は自身の成功の多くを、知識の共有と相互支援のカルチャーによるものだと語っています。彼のリーダーシップスタイルは、チームの編成と部門をまたいだコラボレーションを重視しており、それらが有意義なイノベーションにおいて不可欠な要素となっています。

「たとえ多言語でのコミュニケーションを学ぶ必要があったとしても、常にグローバルなコラボレーションの可能性を模索しています」と彼は語りました。「その経験は、自分でも予想していなかったほどに視野を広げてくれました」

劉のアプローチは、テクノロジー業界で高まりつつある認識を反映しています。つまり、永続的な革新は孤立によって生まれるものではなく、多くの場合は対話から始まるのです。

 


イノベーションは仕事で終わるものではなく、
あらゆる場所で生まれる

劉はこれまでのキャリアを通じて、テクニカルスペシャリストからアーキテクトまで多様な役割を担い、キンドリルのグローバル顧客が直面する複雑なビジネス課題に取り組んできました。しかし、仕事が終わって子どもたちが学校から帰ってくると、彼は全く別の課題、つまり、夕食の準備に集中します。

調理に熱心に取り組む劉は、家族のためにシンプルな食材を栄養豊富な食事に変えることを楽しんでいます。調理は日々の創造性を鍛錬することであり、彼の問題解決のアプローチを反映するものでもあります。

劉は自宅でも職場でも、父親がかつてそうだったように、創造的なマインドセットを発揮しています。エンタープライズシステムの設計であれ、平日の夕食の調理であれ、彼にとってイノベーションは思考の方法であり、それは好奇心、思いやり、体験を共有する喜びによってもたらされています。夕食の食卓で子供たちの喜ぶ姿に覚える満足感は、仕事において有意義な解決策を提供したときに得られる充実感と重なるものがあるようです。

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