ビジネスにおける背景
電子部品市場においてグローバル市場で圧倒的な存在感を放っている村田製作所。同社は「Global No.1部品メーカー」を目指して次の成長へと挑戦を続けており、長期構想「Vision2030」の実現に向けた成長戦略の一環として、DXを強力に推進しています。
村田製作所は2011年から2024年にかけて売上高約3倍、営業利益約6倍 と、1944年の創業から80年の歴史の中で特に目覚ましい事業成長を遂げています。その一端を、キンドリルはITインフラを通して担ってきました。村田製作所とキンドリルは、ITアウトソーシング契約を開始し以来、約15年にわたり、基幹システムにおけるITインフラの高可用性、俊敏性、事業継続性 、運用品質の向上に共同で取り組んできました。
村田製作所にとって、デジタル技術を活用しながらサプライチェーンや生産現場といった事業の根幹を支える領域にまつわる業務を変革し、競争力を高めていくことが不可欠です。それを支えるITインフラには、スピードと見える化、そして将来の変化に耐えうる持続可能性が求められており、 この分野への戦略的投資は「Vision2030」達成の上でも重要な要素の1つです。
「Vision2030」の達成には、ITインフラへの戦略的投資が欠かせません。スピードと見える化、そして将来の変化に耐えうる持続可能性が求められています。
技術的な課題
このように、デジタル化に取り組む村田製作所において近年大きな課題となっていたのが、ビジネスのニーズに迅速に応えられるITインフラおよび、それを省コストで運用するための体制づくりでした。同社では、DXのスピードアップとコスト抑制を実現するため、工場向けや社内業務の多種多様なシステムが稼働する約1,000台のサーバーをAWSへ移行する計画の中で、移行後の運用体制に大きな懸念がありました。
オンプレミス環境を支える技術者は高齢化が進んでおり、技術革新のスピードが速く技術者のキャリアパスとしても魅力的なクラウドを採用しなければ、今後人材確保の点でも難しくなることが予想されました。従来の運用業務における知識の属人化も将来的に大きなリスクとなり得ます。また、サーバーが増えるたびに人手を増やして対応するのは非効率であり、持続可能ではありません。
時を同じくして、村田製作所では基幹システムに関する構築・運用の体制にも課題を抱えていました。同社の基幹システムは品質を担保するための開発からデプロイ、運用のプロセスは確立されていたものの、開発チームとインフラチームが縦割りの組織となっているためしばしば調整が難しいケースも生じており、変化への迅速な対応を阻む一因となっていました。ビジネスの変化を日々の運用から捉え、迅速にアプリケーションに反映できるDevOpsやSREの概念を取り入れた体制強化が急務でした。
ビジネスの変化を日々の運用から捉え、迅速にアプリケーションに反映できる体制が不可欠であり、そのためには目先の業務改善やITツール導入の延長線上ではない、抜本的な変革が必要でした。
ソリューション
大規模なクラウド移行後の運用体制構築とDevOpsなどに代表される組織・プロセスの変革という課題に対し、村田製作所はキンドリルをパートナーに選定。AIを活用した次世代運用サービスとDevOps体制構築支援コンサルティングを組み合わせた包括的なソリューションを導入しました。
・AIを搭載した統合IT運用プラットフォーム「Kyndryl Bridge」を導入。AIOpsの技術を用いてIT運用を可視化・自動化し、膨大な運用データから得られるインサイトの活用を実現
・キンドリルのインド拠点の豊富な技術者リソースを有する「Kyndryl Collaborative」を活用し、IT人材不足のリスクに備えた高品質で持続可能な体制を構築
・「Kyndryl Consult」によるコンサルティングサービスを活用し、今後DevOpsを取り入れていくにあたり、現状の運用成熟度を客観的に評価
・ITIL4やDORAメトリクスといったグローバル標準のフレームワークを活用し、DevOpsおよびSREの思想を取り入れた「To-Be(あるべき姿)」と具体的なロードマップを策定
キンドリルのインド拠点を訪問し、これからの時代に不可欠な運用の姿を具体的にイメージできました。グローバルでの豊富なクラウド運用実績、持続可能な運用体制を高く評価しました。
このプロジェクトによる進歩
Kyndryl Bridgeを活用したAWS運用は2025年11月から開始予定であり、効果を実感するのはまだこの先ですが、今後村田製作所はクラウド移行と併せてコスト3割削減を目標に掲げています。また、今後DevOpsを実現する体制への変革を通じて、業務の可視性向上や、ビジネスの俊敏性向上、ひいては事業成長への貢献を目指しています。
・DevOps体制構築に向けたロードマップを1.5カ月という短期間で策定
・DevOps成熟度調査により既存システムの高い完成度を再確認
・キンドリルが有するフレームワークを活用することで、短期間でありながらも上記の作業を高い品質で実行
・Kyndryl BridgeおよびKyndryl Collaborativeの採用により、業務属人化の低減と持続可能な運用体制実現への見通しを確保
・約1,000台のサーバーのAWS移行後には、3割程度のコスト削減効果を見込む
最後に久保氏は、「今後もキンドリルからの能動的な提案により、AWS運用という現在の領域から、アプリケーションや海外拠点へと支援の範囲を広げていってくれることを期待しています」と語ります。
国内だけでエンジニアを確保するのが難しい現在、かつグローバルビジネスにおける国外のIT環境の強化も課題になる中で、インド拠点を含むグローバル人材リソースも活用しながら、村田製作所はさらなるビジネスの飛躍を目指しています。
キンドリルには当社のシステムにフィットして現状を安定的に維持するだけでなく、主体的に改善していく能力があります。また、グローバルでデファクトスタンダードの製品をしっかり運用できることにも今後の安心を感じました。