メインコンテンツにスキップ
ITモダナイゼーション

次世代のIT運用に必要なものとは?IT運用を憧れの職場にするために必要な3つの視点

お知らせ 2023/08/01 読み取り時間:
大津 浩司 著
IT運用における改善の余地と「NoOps」

IT運用の現場では、クラウドインフラ利用の増加に伴う管理の複雑化や人手不足、コスト削減の要求などに対応しながら、安定したシステム稼働を維持しなければなりません。このような難題は、今後さらに重くのしかかると考えられるでしょう。
限られた人員でより効率的な運用が求められる中、企業は従来の運用手法を次世代のものへとアップデートしていく段階に差しかかっています。

システムをより堅牢で安定したものにしていくには、運用手法を常に見直し、新たな技術や仕組みを取り入れていくことが重要です。
しかし日本では、システム障害の増加やIT人材不足の深刻化などの問題点を指摘されているにもかかわらず、対応が遅れている企業が少なくありません。見方を変えれば「改善の余地がたくさん残っている」とも言えます。
 

次のような例のうちいくつかは、ご自身の会社でも身に覚えがあるのではないでしょうか。

  • 1万件のバッチジョブを10名のオペレーターが毎晩監視
  • セキュリティパッチの適用情報をExcelで管理
  • 毎月1,500台のサーバーにログインして、10労働日かけて月次報告書を作成
  • 申請書はソフトコピーだが、印刷して手書きの署名やハンコで承認
  • 障害発生後に同類事例を検索し、対応を確認

もちろん、このようなIT運用が「あるべき姿」でないことは誰の目にも明らかです。それに対してキンドリルは、IT運用における「嬉しくない」ことをなくす「NoOps=No Uncomfortable Ops」の状態を理想的な姿だと捉えています*。

負荷が「リニアに増えない」あり方を目指す

NoOpsは、利用者・経営者・運用現場すべての課題を解消する考え方です。利用者は24時間365日、負荷集中時でも安定して使用できるシステム環境を入手できます。
経営者にとって嬉しいのは、増大する運用コスト削減や人件費の低減です。運用現場への負担軽減効果も大きく、特にリリース手続き、パッチの適用、リリース監視、待機系システム保守などで生じやすいトイル(手作業の繰り返しなどの苦労)を最小化できます。

さらに、昨今のビジネスで注目されている「サステナブル」の考え方をIT運用にも取り入れるべきでしょう。
管理対象が増える一方でエンジニアの入れ替わりや不足が生じる中、コストを削減しつつ、エンドユーザーに対して持続的に新たなサービスを提供し続けたり、利便性向上という終わりのない取り組みを続けたりしなければなりません。

そこで求められるのが、「IT運用の負荷がリニアに増えないモデル」への変革です。つまり、システム規模や複雑性が増加したとしても、それに比例して運用負荷やコストが大幅に上昇しない仕組みを目指すのです。

その結果としてIT運用を憧れの職場とするために、以下の3つの視点を取り入れることが重要です。

#1 課題を「見える化」し、人材を付加価値の高い業務へシフトする

理想的なIT運用に一足飛びに到達する方法はありません。業務改善のためにどこから手をつけるべきかと悩む企業も多いでしょう。そこで、まず自社や自部門の課題を分類して「見える化」することを推奨します。

分類方法の1つに、攻めか守りかという軸に「組織・人材・ガバナンス」「プロセス」「テクノロジー」を掛け合わせた6つのドメインにマッピングして進めていく方法があります。そうすることで、実現したいことの優先度とそれに対する課題(人材不足、スキル、予算など)が浮き彫りになってきます。

見える化の次は、運用を機械に任せた「人材の有効活用」を計画します。RPA(Robotic Process Automation)やIaC (Infrastructure as Code)など、候補となる技術はさまざまですが、重要なポイントは、監視やサービスリクエストなど、運用手順の機械化に留まらないことです。

人材を有効活用するには、テクノロジーの活用に加えて、組織をまたがる調整やITサービス管理プロセスを含めて、前述の6つのドメイン全てを機械化する視点が必要です。この視点で機械ができる部分は極力機械に任せ、人材はより付加価値の高い業務へシフトすることが1つのゴールです。

 

#2 データを活用してIT運用の現場を高度化する

IT運用において、自動化を駆使したデジタルレイバーの導入はすでに多くの企業で行われているかもしれません。しかし、さらなる高度化に向けてぜひ取り組んでいただきたいのが、AIやデータを駆使したIT運用です。

昨今では、ITソリューションのさまざまな分野やビジネスシーンにおいてAIやデータドリブンの重要性が語られていますが、IT運用も例外ではなく、データが運用の諸課題を打ち砕く強力な武器となると考えられます。

例えば監視システムで得たモニタリングデータ、障害対応や変更依頼で発行されたインシデントチケットなどのデータをデータレイクに溜め込んで分析することで、それを元にインサイトを導き出すことが可能になります。

初めて起きた障害であっても、過去に起きた同様の障害の傾向を学習したAIによって対応手順がリコメンドされれば、運用担当者のスキルや経験に依存しない対応が可能になり、現場の品質が向上するでしょう。
他にも、運用データからシステムの過去の傾向を学習し、通常とは異なる傾向が見られた際にアラートを通知して障害を未然に防止でき、変更作業に伴うリスクを警告するような用途にも効果を発揮できます。

データが運用の諸課題を打ち砕く強力な武器となると考えられます

#3 従業員エンゲージメントを重視する

企業におけるDXの必要性が叫ばれはじめて数年が経過していますが、IT運用の現場ではまだまだ人に依存したレガシーな仕組みが多く残っています。障害が発生すれば時間を問わず対応を迫られ、ミスなく処理を行うことが求められる――こうした働き方は人材確保の観点からも取り除いておくべきものです。

次世代のIT運用は、情報はダッシュボード上で管理され、個人間の属人的なやりとりではなく、チケットベースで業務が流れる形を理想とします。システムの操作や変更は手作業ではなく、IaCのコード編集とリリースで実現するように変え、リリース時のテストも自動化することで安定運用と効率化を両立できるようになります。ビジネスのスピードにも追随可能になるため、経営者視点でも大きなメリットが生まれます。

このモデルへの変革では、IT運用に求められるスキルも様変わりします。IaCを前提とした運用ではコード開発のスキルが必須となるのは明らかであり、AIやアジャイルといった新しい技術や考え方にもキャッチアップする必要があります。

これらを身につけることは簡単ではありませんが、若手を中心とする意欲的な人材にとって市場価値を高める取り組みでもあり、企業として後押しすることは従業員エンゲージメントの向上につながります。私自身も、支援先企業の役職者の方に対して「IT運用を憧れの職場に」というコンセプチュアルな話をすると、IT運用を重視する企業ほど共感していただけています。
企業のビジネスを生み出すのは、開発後に訪れる長い運用期間であり、継続的なユーザ利便性の向上です。このIT運用を担う人材のスキル変革やモチベーション向上は、企業にとって大きな意味を持ちます。

 

次世代のIT運用を実現するために、自動化やデータ活用を追求した先には、自律化を見据えた統合的な「管理コントロールプレーン」の存在が今後必須になると考えられます。

 

昨今の業務システムは、数多あるベンダーのクラウドやアプリケーションを組み合わせて成り立っており、どの業務がどこの基盤で動いているのかを一元的に管理しなければ、「見える化」さえおぼつかない状況に陥ってしまいます。
また、分散クラウドの活用、および日本の人材不足が加速の一途を辿る中、コスト最適化や経営サイクルの高速化を目指すためにも、IT運用の機械化を超えた、IT運営の自律化を実現する統合的な管理コントロールプレーンが重要な1つの要素になると考えられます。

 

キンドリルは、自律化を見据えたIT運用の革新に加え、IT運用に関わる人材の価値向上を実現する未来を、お客様とともに描きたいと考えています。

 

*出典:
https://www.publickey1.jp/blog/18/noopsnoopsnoops_meetup_tokyo_1.html