新たなビジネスの場は、
全く土地勘のない沖縄県でした

新しい“ありがとう”に挑戦したい
―創業25周年のIT事業者が選んだ道は

金融サービスとの連携を迅速に構築

顧客起点のビジネス変革の第一歩へ

株式会社ソルパック 取締役CDTO ソルパック沖縄開発センター 代表 田中良治氏に聞く

ソルパックは、主に中堅中小企業を対象に、ERPなどのパッケージ製品やミドルウェア、さらにはBPO(Business Process Outsourcing)、RPA(Robotic Process Automation)、AI(人工知能)などに関するコンサルティング、導入・運用などさまざまなソリューションを提供するIT事業者です。2022年に創業25周年を迎えた同社は、2018年の社長交代を契機に、第2の創業期として新たな挑戦を始めました。

それは顧客の困りごとを起点にソリューションを提供していくビジネスへの転換です。同社はこれまでさまざまなITベンダーの製品を取り扱い、システムインテグレーション事業を中心にビジネスを手掛けてきました。

しかし、こうした同社のビジネスは、自社が得意とする製品や技術を軸に拡大を図ってきた側面があります。言い換えればプロダクトアウトのアプローチでともいえるでしょう。しかし、これだけでは今後のビジネス環境の変化に追随できないと同社は捉えていました。

ソルパックが注力してきた、システムインテグレーションを中心としたビジネスモデルは、いわば人が稼働した分だけ売り上げが立つビジネスモデルでもあります。逆に言えば、労働力が減少すれば、その分だけビジネスの規模が縮小してしまうことを意味します。もちろん、こうしたビジネスをすべて否定するわけではありませんが、同領域に強く依存している現状に対して、田中氏は危機感を持っていました。

システムインテグレーションのように、企業間が人の連携というかたちでパートナーシップを組むのでなく、システム連携など企業どうしがデジタル上でつながりながら顧客に価値を生み出していく世界を目指しました。

これは直近を見据えての話ではありません。10年後、あるいはその先の世界でIT事業者に求められる価値を考えたとき、既存のビジネスモデルとは別の軸足を設ける必要があったのです。

労働人口が減り、これまでのビジネスモデルは成り立たなくなることが予想される中「利き足でないもう片方の足」を鍛えていく必要があると感じました。

田中良治氏
株式会社ソルパック
取締役CDTO
ソルパック沖縄開発センター 代表 

Asian business person having a meeting with the floor plan of real estate

不動産業界の課題を新規事業で解決

顧客起点の新規ビジネス創出に向けて検討を進める中で、田中氏が目をつけたのは不動産業界でした。同社が所属するFinTech協会での活動を通じて、不動産業界の関係者と会話する中、「不動産の手続きはアナログな部分が多く、デジタルの活用で何とか変えられないか」「契約を電子化し、支払まで一貫して処理できれば便利」といった課題を抱える不動産事業者が多いことがわかったのです。

 

こうした課題を解消したいという思いから生まれたのが、「かんたん新居手続きみんなのアプリ」の企画と開発です。その名の通り、不動産の賃貸契約時の手続きを場所や時間に縛られず、スマートフォンで行えるようにするアプリです。不動産契約は従来、重要事項説明や契約書のやりとりなどがあり、店舗で対面の手続きが必要でした。しかし近年では、法令改正によって、オンライン化や電子化が認められ、デジタルソリューションを活用する好機でした。

 

さらに田中氏は、新アプリの開発とともに、ビジネスのフィールド選定、人材育成など次々と新たな検討を始めました。その中で同氏が注目したのが沖縄県です。技術者を発掘すると同時に育成しながら新しい事業を起こすために「ソルパック沖縄開発センター」を立ち上げたのです。

 

かんたん新居手続きみんなのアプリは、ソルパックにとって過去にも例を見ないプロジェクトです。同アプリを最初に展開する場として選んだ沖縄県には、ビジネスの土地勘を持っていたわけでもありません。既存顧客のコネクションが合ったわけでもなく、まさにゼロからの挑戦だったのです。

沖縄でのビジネスを展開するため、まずは簡易的なアプリを開発して沖縄県内の不動産業者を回って見たところ、先述した課題を感じている不動産業者が多くいることがわかったと田中氏は言います。こうして実証実験の効果検証にて手応えをつかんだソルパックは、かんたん新居手続き みんなのアプリを正式にリリースすることなりました。

不便な現状を変えたいという不動産事業者の願いはお客様起点で困りごとを解決したいと願う私たちの心と共鳴するものでした

田中良治氏
株式会社ソルパック
取締役CDTO
ソルパック沖縄開発センター 代表 

顧客起点の開発に適したインフラ選び

しかし、そこで立ちはだかったのがセキュリティの課題でした。

同サービスは、金融サービスとのAPI連携がシステムに組み込まれていましたが、銀行側からは高いセキュリティ要件が求められます。

Taketomi Town in Okinawa Prefecture

顧客起点でサービス開発を行うために、ITインフラやバックエンドの仕組みの構築・開発にリソースをかけず、アプリケーション開発に注力し、素早くサービス提供を実現できる体制を構築したいと田中氏は考えていました。

Closeup shot of an unrecognizable businesswoman using a cellphone in an office

同サービスを提供するには、電子決済等代行業のライセンスを取得する必要があり、金融庁からもセキュリティ面について厳しくチェックされます。そうした中で、正式リリースに向けて要件を詰めて行った結果、実証実験用に構築したRed Hat OpenShift ベースのITインフラでは、さらに高い水準のセキュリティ対策を施さなければならないことが判明したのです。

セキュリティ水準を高めつつ顧客起点の開発に注力するために、ソルパックが選んだ方法は、キンドリルが提供する「Digital Service Platform(DSP)」上にシステムを移して開発を進めていくことでした。

DSPを選択した理由について田中氏は「金融機関が求めるセキュリティ要件を充足していることが第一だった」と説明します。また経営戦略にDX(デジタル変革)を掲げていない金融機関はほとんどない中で、BaaS(Banking as a Service)、Embedded Finance(組込型金融)を力を入れる選択肢の一つとする金融機関からは、APIを通じて今後さまざまなサービスが提供されるようになると考えられます。DSPは金融機関でも採用が続いていることから、親和性の観点からDSPの利用がメリットになる可能性にも着目しました。

なおソルパックでは、他のクラウドプラットフォームとの比較検討も行おうとしましたが、同社の立場での利用を想定したプラットフォームで、かつ金融機関との連携を強みとするものはDSP以外に見あたらなかったといいます。

セキュリティ要件を満たして
予定通りにアプリをリリース

DSPを基盤に採用し、2022年5月から開発が本格したかんたん新居手続き みんなのアプリは、計画通り10月のリリースを迎えることができました。今後賃貸物件の新規契約手続きにおいて、不動産業者と利用者の双方にペーパーレスやロケーションフリーの恩恵をもたらしていくでしょう。

 

なお開発時には、DSP部分も含めてシステムがセキュリティ要件を充足しているかどうか、第三者機関の脆弱性診断によって確認しました。

 

実証実験の段階で脆弱性診断を実施した際は、ソルパック側で手を加えなければクリアできない点がいくつもありましたが、DSPを適用した本番環境では、機密情報を保持する認証まわりの機能を専門事業者のサービスでまかなったこともあり、脆弱性診断に関して同社側で対応が必要な箇所はほとんどありませんでした。自信を持ってサービスを提供レベルまで大幅に向上したのです。

 

DSP導入のメリットはセキュリティだけではありません。コスト面でも大きなメリットを生み、自前でITインフラを構築した場合に比べておよそ4割のコストが削減されたと評価しています。さらに、構築に要したであろう期間を考慮すると、5割相当の期間短縮効果が得られています。

 

もっとも、かんたん新居手続き みんなのアプリの開発はこれで終わりではありません。今後は支払いまで一貫して処理できるようにしたり、家賃保証会社などの関連する事業者との連携範囲を拡大したりと、利用者の利便性をより向上するための機能拡張、さらには全国展開も検討しています。

 

最後に「このアプリを拡張していくことで、ソルパックの一人ひとりがお客様起点の大切さについて身をもって理解できるようになるものと期待しています」と語る田中氏。加えて同社は、FC琉球とのパートナーシップや就職活動応援プログラム実施など、沖縄への地域密着活動にも尽力し、同社の企業理念でも言及している社会貢献を強化していこうとしています。

 

ソルパックが掲げる「顧客起点」へのビジネス変革に向けた挑戦は着実に前進しており、同社の存在価値をより一層高めていくことになるでしょう。

ビジネスを社会課題と結びつけることで、ソルパックの存在価値を向上させて自分たちの仕事にも誇り持てるようになるほか、果敢にチャレンジを続けられる人材が育ち、私たち自身の変革につながるでしょう。今回のアプリはその最初の一歩です。

田中良治氏
株式会社ソルパック
取締役CDTO
ソルパック沖縄開発センター 代表 

株式会社ソルパック

株式会社ソルパックは、主に中堅・中小企業に向けてさまざまなITベンダーのソフトウェア、ミドルウェア製品を活用したソリューションを提供しており、コンサルティングから、導入、構築、運用まで幅広い支援を行っています。「お客様から世界一『ありがとう』と言われる会社に!」という理念のもと、ITを通じた社会貢献と高い顧客満足の追求を目指しています。​

プロジェクトチーム

田中 良治 氏

株式会社ソルパック   取締役 CDTO ソルパック沖縄開発センター 代表

広瀬 存男 氏

株式会社ソルパック   技術革新戦略室 課長

井上 陽介 氏

株式会社ソルパック   技術革新戦略室

青桝 実優 氏

株式会社ソルパック   技術革新戦略室

谷川 雅俊 氏

株式会社アイ・ティー・ワン         SEサービス事業本部

神尾 雄介

キンドリルジャパン  クラウドテクノロジーサービス事業部

湯浅 晋一

キンドリルジャパン  金融サービスデリバリー

この事例は2022年10月のインタビューをもとに構成しました。

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