世界の第一線で活躍する5人の論客が、AIがいかに新たなビジネスモデルを生み出しているのか、語り合います。
社会の未来とイノベーションを論じる週刊ビジネスポッドキャストThe Innovation ShowとKyndryl Institute が初のコラボレーション。世界有数の企業と向き合い、最前線で活躍する3人のゲストが登壇し、AIによって既存のビジネスモデルがどのように進化しているのか、トークを繰り広げました。司会を務めるのは、Thinkers50 受賞者のエイダン・マッカラン。ゲストには、スイス発の戦略・イノベーション支援企業Strategyzer共同創業者兼CEOのアレックス・オスターワルダー、コロンビア大学ビジネススクール教授でイノベーションと成長戦略を専門とするリタ・マグラス、シンガポールとドバイを拠点とするベンチャースタジオHigh Output Venturesマネージング・ディレクターのウスマン・シェイク、そしてKyndryl Consult シニア・バイスプレジデントのイスマイル・アムラが参加しました。AIがリーダーシップや価値創出のあり方にまで根本的な変化をもたらしている現状を、掘り下げています。 イスマイル・アムラは、AIを既存業務に「つけ足す」技術ではなく、企業そのものを根本から組み替えるものとして捉えています。人とAIの協働が進む中で、人間は「意味を見出す存在」としての役割を強めていきます。組織にはそれに沿って、意思決定やガバナンス、説明責任のあり方を捉え直すことが求められると、イスマイルは指摘しています。とりわけ規制の厳しい業界においては、業務の進め方や検証の仕組み、倫理面の配慮を、組織の戦略とどう結びつけていくかが大きな課題となります。そして「AIネイティブな企業」とはなにか、今構想し直すことが求められています。
アレックス・オスターワルダーは、AIが揺るがすのは製品や業務プロセスだけでなく、企業の中核であるビジネスモデルそのものだと強調します。彼が指摘するのは、今「起業家型CEO」、つまり自ら顧客と向き合う経営トップが再来していること。AIによって顧客に提供できる価値がどう変わるのか、自ら見極めようとする姿勢を持つリーダーです。どんな顧客に対し、どんな価値をどのように創出するのかというビジネスの基本原則は変わりませんが、具体的な中身は刻々と変わっていきます。そういった目まぐるしい変化の中では、ひとつの戦略に賭けるのではなく、複数の実験を並行して進めていくべきと、アレックスは話しています。
リタ・マグラスは、より大きな歴史的転換を見ています。AIは組織を、大量生産時代の階層的構造から、許可をいちいち待たずに行動できる「ミッション主導型」に変える存在です。今、評価のあり方は労働時間に応じて対価を払うものから成果ベースにシフトしつつあり、組織はよりフラットに、意思決定の主体は中央から現場へと広がっています。AIの登場により、変化のスピードが速まった今、企業の競争優位性はあっという間に陳腐化します。これからは自社の強みをどんどんアップデートしていくことが求められる、というのが彼女の主張です。
ウスマン・シェイクは、AI導入によって表面化するボトルネックに注目。仕事のスピードや生産量だけを高めても、現場にどこまでの裁量を持たせるのか、確認プロセス、さらにはその価値をどう対価に結びつけるかという設計が変わらなければ、成果は持続しないと指摘します。求められているのは、人を増やさなければ成長できない構造から抜け出し、現場の学びを仕組みに定着させるとともに、仕事量ではなく成果で測る方向へ、評価の軸そのものを切り替えていくことです。
議論を通じて見えてくるのは、AIの恩恵を受けるのは、現場にどこまで裁量を持たせるのか、どのように価値を提供するのか、そしてリーダーシップのあり方を見直すだけでなく、これまで当然とされてきた前提の何を手放すべきかにも向き合える組織だということです。 くわしくは、ポッドキャスト本編(音声は英語のみ)をご覧ください。
座談会のハイライト
- アレックス - 「今あるものを管理しているだけでは足りません。経営の現場にもっと深く入り込む必要があります。いま、”起業家的なCEO"が再び活躍するようになってきています。スティーブ・ジョブスのようなカリスマ性のあるCEOということではなく、"プロダクトを理解している人”という意味で。」 (00:05:47:07)
- エイダン- 「AIやAIエージェントを使うことによって、仕事の能率は上がります。ただ、裁量や正式な権限がないのにAIを使ってしまって問題になる、というケースが出てきて、慎重論も高まっている。これが過剰な監視や制約につながって、足かせになることを危惧しています。」 (00:14:30:23)
- イスマイル - 「この技術はすばらしいものですし、導入はむずかしいものではありません。エージェントもほとんどコストをかけずに作れます。重要なのは、計画性をもって導入を進めることです。何十万もの自律型エージェントを動かすとなったとき、規制の厳しい業界では、エージェントが指示通りに動いているかだけでなく、組織の使命や目的に沿って正しく振舞っているかをどうやってチェックするかが、あとあと問題になってくるでしょう。監査・説明できる状態を最初から設計しておくことが重要です。」
(00:19:48:07)
- ウスマン - 「仕事のあり方がどう変わっていくか、そしてプライシングがどう影響されるか、測っていく必要があると思います。AIツールの利用率が上がっていても、請求やサービス提供に効果が出ていないのなら、長期的な期待ができるものにはなりません。」(00:22:39:11)
- リタ - 「AIの時代となった今、これまでのやり方の多くを手放す局面に来ていると思います。これまで価値のあったものがそのままでは通用しなくなることを認めなくてはいけません。苦労して身につけた暗黙知の多くも”学び直し”どころか、”手放さなければならないもの”になるでしょう。AIによって新しく生まれる生産性を活かすには、多くのものを、過去のものとして葬らなければいけません。しかし多くの企業が、口にこそ出しませんが、レガシーシステムに自社がどれだけ縛られているか認めることを恐れています。」
(00:26:07:18)
登壇者紹介
エイダン・マッカラン(Aidan McCullan)
イスマイル・アムラ (Ismail Amla)
アレックス・オスターワルダー(Alex Osterwalder)
リタ・マグラス(Rita McGrath)
ウスマン・シェイク(Usman Sheikh)
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