新たなイノベーションが未来の経済的繁栄を促進することは明らかです。しかし、それほど明らかではなく、ほとんど注目されていないのは、デジタルサービスを異なる法域間でシームレスに運営し続ける目に見えない活動を可能にする重要な鍵となる貿易政策の役割です。デジタル経済の進化に伴うサイバーセキュリティの脅威やその他のリスクに対応するために、オープンなデジタル市場を運営し、データプライバシーを確保する責任が貿易ルールにも求められてきているためです。簡単に言うと、21世紀に適した貿易協定は、商品や物理的なものよりもクリックやポータルなどデジタルに関するもので、貿易の性質が進化しています。

この点を意思決定者が十分に認識していないと、今日の世界のデジタル市場と未来のテクノロジーを当然のことと見なす危険があります。

デジタル貿易のフレームワークが転換期にあるのは事実です。関税が注目を集め、周辺的な政治的目標のための交渉手段として多く利用されつつあります。消費者のコストを下げるような包括的な自由貿易協定は、今後もほとんど締結されないでしょう。一方で、今日の貿易政策がどうあるべきかを再考する余地は残されています。

これまでと方針を変えず、安定した状態に留まることも選択できます。しかし、デジタル貿易を制限したい考えの一部の国々に信用を与えるというリスクがあります。間違いなく、WTOの電子送信へのモラトリアムを解消する取り組みで近年見られたように、このリスクは現実のものになっています。この基本的な方針は、WTO加盟国に対してデジタルで提供されるサービスに関税を課すことを禁止しています。しかし、それは無謀な交渉の切り札として何度も使用され、企業や政府にとって回避可能な予測の難しさを生み出しています。その将来を保証することは誰にもできません。

そのため、デジタルフレームワークを前面に押し出し中心に据えて、政策立案者が貿易政策をより広く考える方法を新たに作り出すのは私たち次第です。オーダーメイドのデジタル貿易協定では、最低限でも取引関係を目的に適した状態に保ち、将来の課題に対応するためのビジネスの準備を支援するツールを提供できます。

革新的な経済を推進し、テクノロジーのサプライチェーンが国境を越え、規制とデジタルサービスを容易に連携させる機会は、かつてないほどはっきりしています。しかし、世界的な予測の難しさの増加を考えると、成功するかどうかはデジタル貿易に特化した明確な政治的コミットメントに左右されます。

大西洋の両岸のリーダーは互いに協力して基準を引き上げ、未来志向のデジタルポリシーに対応する一流のデジタル契約を促進すべく、最善の方法を模索すべきです。以下のステップを正しく実行することは、企業が避けられない技術的変革を乗り越えるために重要です。

未来を見据える今こそ、デジタル貿易におけるより深い協力と調整されたグローバルなリーダーシップを活用し、革新的な業界の競争力を維持する方法を検討する最適な時期です。

英国と米国にとって、デジタル貿易におけるより深い統合は理にかなっています。両国は世界をリードするデジタルイノベーターであり、デジタル製品およびサービスのサプライチェーンにおいて重要な役割を担っています。英国は米国のデジタル対応サービスにとって重要な貿易パートナーであり、すでにカナダ、ドイツ、日本よりも二国間で多くの輸出量を占めています。私たちは同じ価値観を共有しています。AIからFintechに至るまで、技術エコシステムの未来を守るための重要なポリシーを国内で拡大し、国際的に輸出する機会を、真剣に検討しなくてはなりません。

同様に、この分野の他の地域のリーダーと協力して勢いをつけ、野心を高め、市場アクセスを深め、デジタル規制を調和させる機会もあります。シンガポール、オーストラリア、チリ、ニュージーランド、日本、カナダは、テクノロジーの新興分野における貿易協力を促進する可能性の最前線に立っています。私たちは皆、効果的なグローバルデジタルポリシーを確立し促進するための多国間協働を推進するために、どのような機会が存在するのかを考えるべきです。

デジタル貿易協定は、世界経済に独自の価値をもたらし、二国間関係を強化し、地政学的な不安定性が増す時代において企業が準備状態に至るよう支えることができます。デジタル貿易は世界貿易の中で最も急速に成長している分野です。この成長を維持するためには、変化の速度に追いついていかなければなりません。良識ある政策設計、協力、そして自信を持った実施により、私たちは今後も物品とサービスの自由貿易を促進し、外国投資家に保障を提供し、将来の技術応用に関する熟慮された整合性のある規制を確立することができるでしょう。今日の意思決定者に、貿易政策についての考え方を見直すよう促すために、私たち全員が自分の役割を果たすべきです。デジタルは貿易の未来です。

PeterはGlobal Counselの代表取締役社長兼共同創設者であり、国際アドバイザリーボードの会長です。以前は欧州貿易委員および英国第一国務長官を務めていました。