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大樹生命保険株式会社

営業支援システムの基盤をコンテナ化してシステム開発の効率と迅速性を劇的に改善

創業時に掲げた経営哲学「いつの時代も、お客さまのためにあれ」を受け継いだ「お客さま本位の実践」をバリューの1つに定める大樹生命保険では、高い顧客満足を提供するために、営業支援システムを刷新。システムの基盤をコンテナ化することで、開発や運用のスピードと効率性が大きく向上し、ビジネスの変化に追随したタイムリーなアプリケーション改修をより容易に行えるようになりました。

ビジネス課題

大樹生命保険では、営業職員の対面営業時ツールとしてタブレット端末を使用していましたが、アプリケーションのパフォーマンスやシステム間で統一感のないインターフェースに対して改善を要望する声が寄せられていました。しかしバックエンドのシステムは、モノリシックなアーキテクチャで実装されていたことから、開発の柔軟性が乏しく、ビジネスの変化に追随し、迅速にアプリケーション改修ができる仕組みが求められました。

トランスフォーメーション

営業職員がタブレット上で利用する営業支援システムの基盤をコンテナ化して刷新しました。キンドリルの支援のもと、Red Hat OpenShiftの導入により柔軟性のあるインフラストラクチャーを手にすることができ、開発、保守運用の効率化やスピードアップを実現しました。

結果

1日当たりのテスト環境リリース回数が約2回から24回へ大幅に増加

リリース時のサービス停止時間が30分からゼロに短縮され、柔軟にシステム刷新が可能に

コンテナ基盤の特色であるポータビリティによって、稼働環境の柔軟な選択が可能に

営業支援システムのパフォーマンスに課題

大樹生命保険は、日本生命保険グループを形成する主要な一社として、生命保険商品を提供しています。創業以来「お客さま本位」の精神に基づく業務運営をすべての取り組みの前提としており、全社一丸となって顧客対応品質の向上に取り組んでいます。

大樹生命保険では、営業職員を通じた対面を前提とする営業モデルで事業を展開してきました。その核となるツールが、営業職員が携えるタブレット端末です。しかし、利用者からは使いづらさを指摘する声が寄せられていたといいます。

同社のシステム企画部 部長 安藤敏氏は、従来のタブレット端末「ミレット」が抱えていた課題について、次のように明かします。

「このタブレットから、保険の新規契約、提案書や設計書の作成、営業活動管理など、多岐にわたる業務システムを利用できるようになっています。しかし、それぞれ所管の組織が決まっており、業務領域ごとに設計を行っていた関係でユーザーインターフェースに統一感が欠ける部分もあり、利用者目線では使いにくいという声がありました」

また、システムが肥大化し複雑になっていたことからパフォーマンスにも課題があり、提案中に長いレスポンス待ちの時間が発生するといった、顧客満足度を損ないかねないシーンも見受けられたといいます。

時代に合わせた柔軟な機能開発が困難

さらに、ビジネス環境が激しく変化する中で、システムのアーキテクチャにも課題が存在しといいます。ミレットの開発を担う大樹生命アイテクノロジーの開発本部 営業フロントシステムグループ 上席課長 岩石晃氏はこう説明します。

「ビジネスのスピードに合わせて機能改修してほしいという要請が非常に強くなってきているものの、従来の環境では対応しきれない状態でした。システムのアーキテクチャはモノリシックである一方、機能は多岐にわたることから、開発は複数チームで行っていました。その際、チーム間や開発者間で整合性を保つために、専任の管理者を置いて変更箇所を1つひとつ確認しながら案件を進めてきたのです。機能改修のたびに影響調査や動作確認に時間がかかることもあり、開発スピードを抜本的に上げることができませんでした」

こうした課題を解消するために、同社は2017年、次期「ミレット」の構想に着手しました。    大樹生命アイテクノロジーの技術・運用本部 基盤開発グループ グループマネージャー 額田正之氏は、経緯を次のように説明します。

「タブレット端末の保守期限が2021年10月でしたので、そのタイミングで端末を新しいものに置き換えると同時に、積年の課題を解決するために、アプリケーションとインフラ環境を再構築しようと考えました」

コンテナ技術を採用して主要業務システムを再構築

次期「ミレット」の構想や計画を進める中で同社は、システムのあり方を根底から見直す必要があると考え、大きく3つの取り組みを進めることにしました。

1つ目は、マイクロサービスアーキテクチャの採用です。機能ごとに独立したサービスを共通基盤上で統合するアーキテクチャを取ることで、機能ごとに並行開発を進められるようになります。

「これによってモジュール数は、従来の3つから34になりました。業務所管ごとに分けるべきという考えもありましたが、それでは細かすぎるなど運用上の問題があることから、運用実態に沿いつつリリースしやすさという点も考慮して分割する数を決定しました」(岩石氏)

2つ目は、自動化ツールの活用です。DevOpsの考え方を取り入れると同時に、業界標準の開発ツールを活用し、ビルド、コード検査、デプロイ、テストといったリリースまでの一連の作業を自動化することにしました。

そして3つ目が、コンテナ基盤の構築です。最新の仮想化技術によって、柔軟にサーバー環境を構築できるようになれば、複数バージョンでのテストを並行して実施可能になります。これなら複数案件を並行に進められるので、全体の開発スピードを上げることができます。

「現在はオンプレミスでシステムを運用しているのですが、老朽化していることもあり、近い将来にはクラウドサービスの利用を検討しています。それに伴って次期ミレットもオンプレミスからクラウドへと移行することになりますが、今からコンテナ基盤上に構築しておくことで、今後の移行が容易なるだろうという狙いもありました」(安藤氏)

大樹生命保険がコンテナ基盤を構築するにあたり、候補に選ばれたのが同分野のデファクトスタンダードであるKubernetesでした。しかし、当時はコンテナ技術に明るい人材が同社内にいなかったこともあり、オープンソースのKubernetesを自社で利用することは現実的でなかったといいます。

「そこで、容易に導入でき、立ち上げからサポートを得られることを要件に製品を検討しました。通常のKubernetesにない運用機能、稼働状況を可視化できる管理画面なども備わっていることが望ましく、8,000人規模で同時に使っても安定稼働する、大規模なインフラを構築できるような製品であることが求められます。そこで、他社でも実績が多く、何か問題が発生したときに事例を引きやすいことも決め手となり、キンドリルの提案したRed Hat OpenShiftの採用を決定しました」(額田氏)

海外の情報を取り入れ、本格稼働に向けた体制を築く

大樹生命保険および大樹生命アイテクノロジーは、こうしてキンドリルによる協力のもと、Red Hat OpenShiftによるコンテナ基盤の構築に着手しました。大樹生命保険でコンテナ技術を扱うのは初めてということもあり、早い段階からキャッチアップに取り組んだと額田氏は話します。

「ほとんどのメンバーは、書籍で読んだ知識はあってもコンテナに触ったことがない状態でしたが、キンドリルの技術者から情報提供を受けたり、ご招待いただいたセミナーに参加したりする中で、若手メンバーを中心にコンテナへの関心や興味が芽生えていきました。計画策定の段階から約1年かけて PoC(概念実証)を実施したのですが、興味関心を持って取り組めたことで、管理者が想定していた以上にスムーズに進められ、その後の自信につながりました」

さらに額田氏は、キンドリルのサポートについてこう評価します。

「キンドリルの方には各種ミーティングにも同席していただき、設計に関する助言、技術的な課題への対応を、同じチームの一員として一緒に進めてもらえました。OpenShiftでは海外の担当者に問い合わせるケースが多いのですが、時差もある中でグローバルの複数の担当者をオンラインでつないで解決に導くなど、ご尽力いただきました」

コンテナ基盤によってリリース時のサービス停止時間がゼロに

PoCからおよそ2年をかけて開発した、新たなタブレット型営業端末「ミレット Plus」は、2021年5月から全国約8,000人の営業職員が利用を開始しました。

「営業端末で課題だった点の多くを改善することができました。一番大きかったのは、設計書作成のパフォーマンス向上です。今では以前のようにシステムの応答を長い時間待つことがなくなりました。また、ユーザーインターフェースを統一したことで、利用しやすくなったという声があります。初めて手にするデジタルに不慣れな営業職員でも、問題なくお客さまと面談ができており、社内でも非常に高い評価を受けています」(安藤氏)

システム運用面でも大きな成果が得られたといいます。新規テスト環境の構築期間は、環境構築手順をコード化することで自動化が可能となり、平均して40日から0.5日へと大幅に短縮されました。また、機能ごとにリリースできるようになり、チーム間の調整の簡素化などにつながったこともあって、1日あたりのテスト環境へのリリース回数は平均2.1回から23.8回に増加しました。

「リリースのたびにさまざまな調整が必要だったので、これまで非常に負担がかかっていましたが、そのプロセスがなくなったことで、開発者やテスターが本来の作業に集中できるようになりました。また、開発資源管理のために置いていた専任の技術者が不要になったことで、年間1000万円程度のコスト削減が見込まれます」(岩石氏)

さらに、リリース時のサービス停止時間については、従来は30分要していましたが、大きな改善があったと岩石氏は説明します。

「従来では時間を調整し、ユーザにも連絡していましたが、今ではコンテナ基盤の機能を利用することで無停止となり、開発のサイクルを非常に速く回せるようになりました」

より高い顧客体験の創造を目指す

このようにコンテナ基盤のメリットを実感している同社では、今後別のシステムについてもコンテナの採用を検討していく意向です。

「当社ではレガシーなWebシステムも持っているのですが、これについても順次、再構築のタイミングでコンテナへの搭載を進めていこうと考えています」と岩石氏は話します。さらに額田氏も、「これまでオンプレミスのみでしたが、IBM Cloud上にお客さまサービスの機能をコンテナ環境で動かそうと取り組みを進めているところです」と続けます。

営業職員の生産性向上を支援することで、最終的には顧客へのサービス品質向上にもつながっていきます。そのためには、今後ますますITが重要になるだろうと安藤氏は考え、その期待に応えたいと語ります。

「お客さまに選ばれる保険会社であるために、システムに何ができるのかを考えていくと、お客さまとの接点となるシステムの充実を図っていくことが欠かせません。今は営業職員チャネルによる対話が中心となっていますが、今後は営業職員を望まない方のために、ダイレクトでつながれる接点を作っていく必要がありますし、そこに他社と差別化できる要素があると思います。感動してもらえるような顧客体験価値を提供できるシステムを作っていきたいと思っています」

そして、そのためにもキンドリルへの期待が高まっています。

「キンドリルには、これまでと変わらない品質でサービスをご提供いただくだけでなく、より一層メリットが出るようなサービスになるよう願っています。今後はオープンプラットフォームでの選択肢も増えていく中で、柔軟な提案を期待しています」(安藤氏)

新しい技術であるコンテナ基盤を恐れることなく採用した大樹生命保険では、今後もキンドリルの支援を通じて、ベンダーにとらわれない適材適所の技術を採用することで、時代の変化に対応し、顧客から選ばれる生命保険会社として認知が広がっていくことでしょう。

「今回のコンテナ基盤をベースにこれからもより高い顧客体験価値を提供できるシステムを作っていきたいと思います」
-  大樹生命保険株式会社 
システム企画部 部長 安藤 敏 氏
「今後クラウドサービスの利用を積極的に推進したいと考えており、今からコンテナ基盤上に構築しておけば、移行を容易に実現できるだろうと考えました」
-  大樹生命保険株式会社 
システム企画部 部長 安藤 敏 氏
「キンドリルの方には各種ミーティングにも同席していただき、設計に関する助言、技術的な課題への対応を、同じチームの一員として一緒に進めてもらえました」
-  大樹生命アイテクノロジー株式会社 技術・運用本部 基盤開発グループ 
グループマネージャー 額田 正之  氏
「当社ではレガシーなWebシステムも持っているのですが、これについても順次、再構築のタイミングでコンテナへの搭載を進めていこうと考えています」
-  大樹生命アイテクノロジー株式会社 開発本部 営業フロントシステムグループ 
上席課長 岩石 晃  氏
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